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クリニックのホームページは,求人応募で必ず閲覧されている
院長のお話を伺うと,このような会話がよくされています。
「歯科衛生士がいないんだ」
「いい歯科衛生士,来てくれないかな」
「募集しても,なかなか応募がないんだ」
多くの院長は,歯科衛生士の不足でお悩みのようです。
しかし,誰でもいいというわけにはいきません。自院に適した人材を求めています。
採用する側としては,スキルや性格など個々で異なります。
また,応募する側としては,待遇や福利厚生,相性,立地などで勤務先を選んでいます。
歯科衛生士にとって,「勤務先を選べる」時代といえます。
選ばれる側の歯科医院は,待遇面ばかりではなく,特長や職場の雰囲気などを,ある程度は打ち出していくことが望ましいでしょう。それには,ホームページがもっとも効果的といえます。なぜなら,歯科衛生士や歯科助手,勤務医にしても,ホームページを参考にしているからです。
些細なことから始まる人材流出
できれば求人募集は,事業拡大の時だけにしたいものです。しかし。現実はそんなに甘くはありません。夫の転勤などのライフステージの事情や家族の介護や病気による退職であれば,残念でありますが,あきらめもつきます。しかし,人間関係による退職はなんとかしなければなりません。
院長は誰もが,スタッフを育成して,長期的に勤務してもらうことを願っていると思います。とはいえ,女性を中心とする職場環境は,たとえ少人数でも,院長にとっては難しいものではないでしょうか。おそらく多くの院長は,診療に専念したいため,
「できたら,スタッフ同士でうまくやってほしい」
「女性間の問題は,女性同士で解決してほしい」
「あまり,深入りしたくない」
このような気持ちになりがちではないかと思います。
スタッフ同士の不和に,気が付かないふりにも,心当たりはありませんか。
院長は,歯科医としての技術を磨きながら,専門知識を収集しています。さらには,日常業務のほか,医院経営にも取り組んでいます。
「なるべくなら治療に専念したい」
「新たな治療法や最新の治療についての知見を高めていきたい」
「些細な人間関係に巻き込まれたくない」
本音は,このように思っているのではないのでしょうか。
しかし,院内の小さな問題を見ないふりや放置は,問題の種を大きくしてしまうことにもなりかねません。
当人同士で,いつのまにか問題が解決すればこんなによいことはありません。しかし,関係者間では,問題解決しないこともあります。スタッフの退職に至ることもあります。「問題」は,とても些細なことからはじまります。
早期発見は経営も同じ,問題の根源を見つけよう
早期発見が大切なことを患者さんに指導します。
同様に,早期発見が医院経営でも大切なことを肝に命じていただきたいと思います。
特に,スタッフマネジメントでは,問題の早期発見が最重要です。時間が経過して感情的な問題が蓄積した後では,大きなわだかまりを残してします。放置するとスタッフ流出の原因になります。
スタッフマネジメントは,経営に携わる者は回避することができません。
そして,スタッフとの信頼関係を構築していくことが肝要です。
早期発見のために,効果的な取り組みは3点にまとめることができます。
1. スタッフとの日常的なコミュニケーション
2. 不定期で勤務時間外(休憩)にお邪魔する(なごやかに)
勤務時間外に,ちょっとした差し入れや非業務の雑談をしてリラックスしてもらいます。
3. 定期面談
スタッフとしっかり対話し,院長からお願いしたいこと,スタッフからの意見ことなど,話し合える機会を持つ。
さらに説明を加えていきます。
1)スタッフとの日常的なコミュニケーション
スタッフとの円滑で日常的なコミュニケーションによって,個々のスタッフが,どのように働きたいと思っているか。 スタッフ同士では誰と仲良く信頼関係があるか,業務へのモチベーションなどが把握できるようになります。
スタッフ間の業務連携の具合,役職を超えた上下関係といったようなこともよくわかるようになります。今まで,仲が良かったスタッフ同士に,なんとなく距離が生じることもありますが,微細な変化もわかるようになります。
前述のポジティブ・フィードバックとは,些細なことでも言葉にして感謝をします。「手際がいいね」「さっきの声がけよかったよ」「患者さんが喜んでいたよ」「電話の対応もいいね」などといったルーチンワークのちょっとしたことを言葉で表現します。そして,その言葉は「ポジティブ」でなければなりません。すると,その言葉を受けたスタッフの多くはモチベーションが向上します。
器材導入がなくても,コストを支払わなくても,感謝をポジティブに言葉にするだけで,大きな効果を得ることができます。さらには,人間関係も円滑になりますので,ポジティブ・フィードバックを使わない手はないでしょう。注意点は,単なるお世辞や,思ってもいないことを表面的に口にするようでは,ポジティブ・フィードバックにはなりません。
2)不定期で勤務時間外(休憩)にお邪魔する(なごやかに)
スタッフ間の問題は,表面では見えることがない水面下で潜行していることがあります。勤務中では,なんとなく雰囲気が違うと感じながらも,よくわからないことが多いです。
勤務時間内で感じたスタッフへの違和感の原因を探るには,休憩時間に雰囲気を感じ取る方法があります。例えば,ちょっとした差し入れをして休憩室にふらっと現れると,実態が垣間見ることができます。席の位置や個々の過ごし方や雰囲気など。この間まで,額を寄せ合って話していた人が,お互いに距離を取っている。仲が良いと思っているスタッフの間で,なんだか深い溝があるように見えることもあります。
昼休みは自由時間が一般的だと思います。スタッフによっては,勉強していたり,外出していたり,寝ていたりと自由な過ごし方をしていると思います。自由でいてほしいのですが,実は休憩時間も先輩からの引き継がれた慣習のようなもので不自由な休憩時間になっていることもあるのです。
3)定期面談
スタッフの面談は,定期・不定期の両方が必要です。定期面談は,あらかじめ相談事を準備することができます。不定期面談は,全てのスタッフに状況確認に有効です。 ここで触れている「面談」とは,クリニックを中心に,ある種の対等な関係で,お互いの考えを共有して,課題や問題の再確認が主たる目的になります。
院内の人間関係がギクシャクしていることに気が付いた時こそ,周りのスタッフの情報がとても参考になります。情報を集め,その状況を客観的に分析することが必要となります。 スタッフの中には,さまざまな理由で,一緒に働きにくくなっていることもあるかもしれません。クリニックにとって大切な人材が退職されては大きな損失です。
そこで問題の兆候を速やかに摘み取りその対処するために,スタッフ全員から,さまざまな角度で情報を収集するのです。 当事者2人だけの話を聞くと,なかなか問題の本質は見えにくく,双方がお互いを非難しあう構図を散見します。
そのようなケースでは,当事者が主張する問題をひとつ解決しても,また,次の問題に発展します。問題の根元を見極めるための要素として,周りの目はとても参考になります。
問題点の早期発見は,大切なスタッフの流失に歯止めをかけます。スタッフが長く安定的に勤務してくれて,患者さんとも面識ができていることが,院長にとって,何よりも心強いのではないでしょうか。
経営者としてスタッフマネジメントを心得て,スタッフの能力が発揮してくれることは,人材に悩むクリニックにとっても,経営に頭を掲げる院長にとっても,あるいは,いまは問題がないと思っている院長にとっても,スタッフマネジメントを早期に習得することが望ましいでしょう。
上席コンサルタント 伊藤美奈子
(兼ISO認証取得コンサルタント)
早稲田大学政治経済学部卒業後、米金融機関入社。在職中にコーネル大学大学院にて経営学修士取得(MBA)。NY本社勤務を経て帰国。監査、財務、管理会計、内部統制等担当後退社。米最大手CSRコンサルティングカンパニーのアドバイザーとして、企業の社会的責任の推進。また、財務コンサルタントとして、日本最大手証券会社、豪金融機関のプロジェクトに参加。その後、株式会社一助を設立、代表取締役。新規事業サポート、経営戦略立案などのために、財務、スタッフマネジメント、マーケティングなどのアドバイザリーに従事。ISO認証取得支援。最近は健康長寿社会における歯科の役割に期待を持つ。職場環境を好転させる触媒者としても強みを持つ。
