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歯科医院経営は,口腔を通じて全身の健康支える役割があります。それは,個々の患者だけではなくその集合体となる地域貢献や社会貢献にもつながる重要な役割を担っています。
院長は,診療業務と経営者の役割があります。
どうすれば,順調な医院経営を続けながら,診療に専念できるでしょうか。
多くの院長は,我流で経営を行っているのが実態ではないでしょうか。
「むし歯の洪水」
このような時代ではそれでよかったでしょう。歯科医院のスリッパが不足している時代で,患者さんが次々にやってくる時代。保険診療でも十分にやっていける時代です。
しかし,現代はそうはいきません。当時とは,診療報酬も患者の要求もスタッフの考え方から社会状況まで,大きな変化が起きています。これら躍動感さえ感じる時代や価値観の変化に歯科医院が適用していくために,最重要なことは,「人」に尽きると考えています。
どんなに技術を学んで先端治療を施していても,スタッフの協力がなくては,医院の運営を続けることができません。スタッフを育てて,経営者を支える体制を構築することが最重要です。
本稿では,医業経営の最重要な事項「スタッフマネジメント」について,数回に分けて解説いたします。
- 優秀なスタッフが流出する要素
歯科医院は,女性スタッフ率が圧倒的に高い職場です。しかも院内では,少人数で運営していることが一般的だと思います。少人数で女性スタッフ率が高い職場環境。院長である経営者は,何が起きているかわからないことが往々にしてあります。
「少ない人数だから,その中では,仲良くやってほしい」
「そんなに難しいことや負担になるようなことを要求しない」
「決められたことをきちんと行って,役割を果たしてほしい」
「伝えたことは,スタッフ間で共有し,みんなで協力してほしい」
などなど,院長はいろいろと考えていると思います。
なんとなく,うまくやってくれるのなら,多少の融通はきかしてもよいとして,契約以上の厚遇を提供してしまった経験もあるのではないでしょうか。
しかしながら,女性の多いスタッフ間の人間関係は,
・些細なことと思われる原因で,もめ事が発生しやすい
・小グループ化し互いにけん制しあっている
・ボス的のような支配的なスタッフが存在する(役職・職種を超えて)
・職種の違うスタッフ間で「溝」ができる
・院長の信頼,待遇などで格差を感じる
上記のほかにも,院長の意図していないことが起こることがあります。診療に専念したい院長にとっては,
「できたら,スタッフ同士でうまくやってほしい」
「女性間の問題は,女性同士で解決してほしい」
「あまり,深いりしたくない」という気持ちではないでしょうか?
このような院長の気持ちが見え隠れすると,ときにスタッフ問題はこじれてしまいます。
最悪の結果は,優秀なスタッフが流出してしまいます。
特に,女性スタッフには,いろんな対立構造の要素があります。
(同世代の一例)お互いに競争してしまう傾向に・・・。
「私のほうが,仕事ができる。」
「私のほうが,たくさん働いている」
「私のほうが,院長に頼りにされている」
「彼女は仕事ができない」
「教えてあげているのに感謝が足りない」
「何度も同じ質問をしてきて,全く嫌になっちゃう」
このように,ささやきあっていることもよく見受けられます。
(世代間ギャップの一例)
「全く新しいシステムに対応できないから,私の負担が増える」
「経験不足で使えない」
「患者さんへの礼儀がなっていない」
「院長になれなれしい」など・・・。
お互いに,いがみ合ったり,口喧嘩が始まると大変です。狭い空間で,雰囲気がピリピリとしてきて,それは,患者さんにも伝わります。
患者さんは「あそこのスタッフはなんだか怖い」「ギスギスしている」
このように感じているかもしれません。
医院の雰囲気が悪いと感じるとき。
それは,患者さんの他院流出につながります。
スタッフの流出は,医院にとって大きな痛手
それぞれの医院は独自のスタイルを持ち,業務プロセスが,他院とは異なる点が多々あります。先輩スタッフは新人スタッフに,一つ一つ説明して,少しずつその医院でのやり方や仕組みを教えていきます。
院長も新人スタッフに気を配り,早く当院の業務プロセスを理解し,なじんでもらうために,さまざまな教育や指導,配慮を可能な限り行います。
このような育成過程では,先輩スタッフや院長が多くの時間と労力を費やしています。しかし,それは仕方がないことです。
スタッフが辞めてしまうということは,また一から繰り返すということです。
学会発表やスタディグループへの参加促進など。スタッフの成長をサポートしたにも関わらず,スタッフが退職してしまうと大きな痛手になります。
人材育成にかけた費用も時間も無駄になってしまいます。
さらに,人材を獲得するための高いコストが必要となります。
- 離職する理由は正しく理解しよう
スタッフが辞める理由は,さまざまな原因があります。
配偶者の転勤,出産,子育てなどのライフスタイルの変化。
スタッフの興味が他院に向かったことによる転職。
多業種へと向かったことによる職種変更
個人的な金銭的問題
健康の問題などなど。
退職によっては,院長の努力でも避けられないケースがありますが,スタッフが辞める理由を必ず押さえておくことも経営者にとっては大事です。誰でもミスがあります。院長にもミスがあります。院長が,経営者として理解して,正しく医院を運営していくことにより,人材流出を食い止めることができます。
- 転職先の確保はカンタン!?
現在は,人手不足といわれています。以前でしたら,再就職はなかなか難しいと思われていた女性スタッフ。今は,どのように考えているのでしょうか。
都市圏では,医院勤務スタッフは比較的,転職が容易であることを心に留めておく必要があります。
つまり,退職しても経験を生かして他の仕事につけると思う傾向にあります。 このような状況下では,気に入らないことがあったり,人間関係で嫌な思いをしたり,ほかの医院のよい評判を聞いたりしたことなどが理由となって,簡単に離職してしまう可能性があるのです。
スタッフの流出を防ぐことが節約になる
スタッフマネジメントを 真剣に取り組むことは,医院の安定経営につながります。時間をかけて育成した人材の流出を防ぎ,人材育成コストと時間を節約しましょう。
スタッフの協力を得て,患者さんに心のこもった質の高い治療を提供しましょう。
医院の経営にとって,大変重要なスタッフマネジメントに取り組むことにより,問題を早期発見し,問題の芽をきれいに摘み取ってしまいましょう。
上席コンサルタント 伊藤美奈子
(兼ISO認証取得コンサルタント)
早稲田大学政治経済学部卒業後、米金融機関入社。在職中にコーネル大学大学院にて経営学修士取得(MBA)。NY本社勤務を経て帰国。監査、財務、管理会計、内部統制等担当後退社。米最大手CSRコンサルティングカンパニーのアドバイザーとして、企業の社会的責任の推進。また、財務コンサルタントとして、日本最大手証券会社、豪金融機関のプロジェクトに参加。その後、株式会社一助を設立、代表取締役。新規事業サポート、経営戦略立案などのために、財務、スタッフマネジメント、マーケティングなどのアドバイザリーに従事。ISO認証取得支援。最近は健康長寿社会における歯科の役割に期待を持つ。職場環境を好転させる触媒者としても強みを持つ。
